ぶろぐ

2019/11/08 08:23




■寿司乙女の日記 第14話「つぼ」


「悔しい~!!」





※オクト↑



たこちゃん💛と遊ぼうとしたら、またオクトに墨をかけられたわ!

いつもの事でげっそりするわ!
…すべすべ、ぺたぺた。

「早く顔洗わないと……お肌に悪いわ!」

どうにかオクトを封じ込めないと……。
どうすれば……。


ぺたぺたすべすべ。
基礎が大事だから基礎が!
美容は一日にしてならずって、慈母がってたし。

あ…、そうだ!慈母に聞いてみよう!


~猫節寿司店~


「ねぇ?慈母?」



「ん?どうしたのイカ?」

朝の仕込みの時間に、わたくしは慈母の所へやって来た。
どうしよう……でも……。
わたくしは思い切って慈母に相談してみた。

「じ、慈母!たこを封じ込めるにはどうすれば?!」

「ん?つぼじゃない?!わかんないけど!?」

つ、つぼか……。
全ての道は猫節に通じるってことわざもあるから……ここは慈母を信じて見よう。


~骨とう品店~

「いらっしゃい!…あれ?…今確かに…小っこいのが…」

「はい、わたくしが来たですわ!」

憎っくきオクトを封じ込めるツボが……この店の中にあるはず!!!!!
それにしてもここの店主は、わたくしの姿が若干見えたみたいね!
さては…ちょっとだけ…寿司好きの人みたいね!

わたくしはツボを見て回った。
でも……どれも高いわ~!
最近、慈母のお手伝いをしてないから……手持の所持金が心もとないわね!
ま、今日は見てるだけで行くわ。

「値ごろ感のある、リーズナブルなタコつぼ……つぼつぼ……」

「どうしたんだい?お嬢ちゃん?その年で壷の趣味とは渋いねぇ!」

!?わたくしが見えるのかしら?このおじさま?

「…おほん!今日も店には客が来ないから…エア接客でもするかな…」

いや、個人的に必要なわけじゃ……。……個人的にか……この場合。
と、言うか…エア接客って…このおじさんに少し同情してしまいます…わたくし…。


店主のおじさんが、奥から壷を取り出して1人で講釈を垂れ始めた。

「お嬢ちゃんこの壷は由緒正しき出の……壷でさぁ……約100年前の……釜元でさぁ……」

だめだ、このおじさんが言ってる事の半分以上が聞き取れない!
専門的な事ばかり言われても……。
それに…見てて泣きそう…わたくし…。世の中って…無常だわ…!

「その壷がなんと10万円ポッキリ!安い!お嬢ちゃんには特別だよ!消費税10%はおまけしておくよ!」

「はぁ……」

だめだ全然話にならないな。
見えてるのよのね?このおじさん…わたくしの事?
わたくしはおじさまの話を遮って尋ねてみた。


「あの!タコつぼってありますか?」

「あ?蛸壺がいるのかい?蛸壺やはかない夢を夏の月ってね!あるよ!その赤いのが明石産の高級たこ壷だよ!」

おじさんが指さす方を見ると赤い壷が目に入った。

「い、一万円か……」(ちょっと足りないな!買うわけじゃないけど…)

「お嬢ちゃん?タコは綺麗好きだから、蛸壺漁が終わったら綺麗に洗っておくんだよ?そしたら来年も使えるからね!」

わたくし蛸壺漁に出かけるわけじゃないんだけど……。……いや、タコは捕まえるけど……ちょっと違う意味よね。
しょうがない、慈母のお手伝いをして蛸壺代を貯めてから出直そう。
とぼとぼと歩いて、わたくしは店の外へ向かった。

「お、お嬢ちゃん?」(金持ってないのかな?)

店の扉に手を掛けた時、おじさんがわたくしに声を掛けた。

「自分で作ってみたらどうだい?お嬢ちゃん?」

「そ、それだ!」

簡単な事よ?
調べて壷を作ればいいんだわ!
ナイス!骨董品店のおじさん!

「あ、それじゃ!おじさん!わたくし壷を作ってきますわ!」

「お、おう!また来てくれよ!ちっこいお嬢ちゃん!」

おじさんの言葉を背中に受けながら、わたくしは骨董品店の扉を押し開いた。

「あんた!さっきから!何一人でブツブツ言ってんだい?!お客の一人もいないってのに?」

「いや?エア接客してたら…小さい妖精みたいなお嬢ちゃんが来てだな…」

骨董品店の店主の妻らしき女性が店の奥から現れた。
女性は顔を左右に振りながら項垂れてる。

「馬鹿も休み休み言いなさい!頭にメガネ乗せたままで何がみえるのさ?老眼なのに…」

「あ、あれ…確かに居たんだけどな…?見間違いかな…?はは…」

おしまい